全 情 報

ID番号 09386
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 NOVA事件
争点 外国人英会話講師の労働者性
事案概要 (1) 本件は、いずれも英語を母国語とする外国人であり、被告(株式会社NOVA)にて英会話講師として勤務していた原告6人が、原告らと被告間の契約につき、形式上業務委託契約とされていたが、実質的には労働契約であり、原告らの年次有給休暇請求権の行使を違法に妨げた上、健康保険加入義務を懈怠したとして、被告に対し、不法行為又は債務不履行による損害賠償請求権に基づき、慰謝料・国民健康保険の保険料・弁護士費用の損害賠償を求める事案である。
(2)判決は、原告らは労働基準法上の労働者に当たると解するのが相当であるとして、年次有給休暇請求権に基づく慰謝料のほか、原告5人については、健康保険法上の被保険者に当たるとして慰謝料の請求を認容した。
参照法条 労働基準法9条
体系項目 労基法の基本原則 (民事)/労働者/ (2) 委任・請負と労働契約
年休 (民事)/14 年休権の喪失と損害賠償
裁判年月日 令和元年9月24日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 平成28年(ワ)4280号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例1237号25頁
審級関係 控訴
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則 (民事)/労働者/ (2) 委任・請負と労働契約〕
(1)業務遂行上の指揮監督、具体的仕事の依頼・業務従事の指示に対する諾否の自由、勤務場所・勤務時間の拘束性、報酬の労務対償性、専属性に係る事情を総合考慮すれば、原告らは、被告の指揮監督下において労務を提供していたものと評価することができるし、原告らの報酬についても労務の提供の対価として支払われたものとみることができる。
 原告らの専属性の程度が高いことも合わせ考慮すると、原告らは、被告との関係において、労働基準法上の労働者に当たると解するのが相当である。
〔年休 (民事)/14 年休権の喪失と損害賠償〕
(2)原告らは、労働基準法上の労働者に当たるから、被告に対して年休権を有していた。その日数は、労働基準法39条に従い、原告A1が21日、そのほかの原告らが10日となる。しかるに、被告は、原告らとの契約を業務委託契約と扱い、原告らの年休権の行使を違法に妨げたと評価せざるを得ず、不法行為の成立を認めるのが相当である。
その結果、原告らが被った精神的苦痛に関する慰謝料額については、年休権の日数、1レッスン当たりの報酬単価、原告らが授業代行事務費として1レッスン当たり500円を被告に支払う代替講師制度を利用していたことその他本件口頭弁論に顕れた一切の事情を勘案して、原告A1について20万円、そのほかの原告らについて各10万円の限度で認めるのが相当である。
(3)健康保険法3条3項各所定の適用事業所の事業主は、健康保険法48条に基づき、健康保険の被保険者の資格取得等の届出をすべき義務を負うものと規定されるが、この届出義務は、単なる公法上の義務にとどまらず、労働契約の当事者である使用者は、労働者に対し、労働契約に付随する信義則上の義務又は不法行為上の作為義務として、上記被保険者資格得喪等の届出を適正に行うべき義務を負い、同義務を怠った場合は、労働契約上の債務不履行責任又は不法行為に基づく損害賠償責任を負うと解するのが相当である。少なくとも原告A1以外の原告らについては、短時間労働者として被保険者から除外するということは相当ではなく、健康保険法上の被保険者に当たるというべきである。>
 そうすると、被告は、原告A1以外の原告らについて届出義務を怠ったことについて、労働契約上の債務不履行責任又は不法行為に基づく損害賠償責任を負うものといわざるを得ない。
 被告の届出義務違反により、無保険状態という不安定な状況におかれたことは否定できないものの、これにより具体的にどのような不利益を被ったのか明らかでないこと、健康保険の保険料の負担をしていないことも考慮すると、これらの検討に原告らの被告での各在籍期間その他本件口頭弁論に顕れた一切の事情を勘案して、原告A4について15万円、原告A2及び原告A5について各10万円、原告A3及び原告A6について各3万円の限度で慰謝料額を認めるのが相当である。