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ID番号 09391
事件名 地位保全等仮処分申立事件
いわゆる事件名 ヤマサン食品工業(仮処分)事件
争点 懲戒処分を理由とする再雇用の拒否
事案概要 (1) 本件は、債務者(ヤマサン食品工業株式会社)と雇用契約を締結して定年まで勤務してきた債権者が、債務者との間で、定年翌日の令和2年7月21日を始期として債権者を再雇用する旨の嘱託雇用契約に合意していたにもかかわらず、新型コロナウィルス感染症に係る緊急事態宣言下での自宅待機期間中に私用で外出したことを理由として譴責の懲戒処分を受けたことを理由に、上記始期付き嘱託雇用契約を解除する旨の令和2年7月8日付けの通知を受け、定年後の再雇用を拒否されたところ、このような合意の解除は、客観的に合理的な理由及び相当性に欠け、権利の濫用に当たり無効であると主張して、債務者に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めることを求めるとともに、賃金の仮払を求める事案である
(2) 決定では、令和2年8月から、本案の第1審判決の言渡しの日の属する月まで、毎月末日限り、31万9725円を仮に支払うよう命じた。
参照法条 高年法9条1項
体系項目 退職/4定年・再雇用
裁判年月日 令和2年11月27日
裁判所名 富山地
裁判形式 決定
事件番号 令和2年(ヨ)17号
裁判結果 一部認容、一部却下
出典 労働判例1236号5頁
D1-Law.com判例体系
審級関係
評釈論文
判決理由 〔退職/4定年・再雇用〕 (1)債権者は、定年に達した令和2年7月20日時点において、60歳であり、就業規則3-7別表1の基準年齢(当時は63歳)には達していなかったから、同月21日以降も債務者に再雇用されるために、本件労使協定に定める基準の適用はなく、解雇事由又は退職事由に該当する事由がないと認められる必要があったにすぎないと解すべきである。そうすると、本件就業規則抵触条項についても、解雇事由又は退職事由に該当するような就業規則違反があった場合に限定して、本件合意を解除し、再雇用の可否や雇用条件を再検討するという趣旨であると解釈すべきである。
(2)定年前約2年間における債権者の人事評価の結果を全体としてみると、債務者の人事評価制度やそれに基づく査定を前提としても、せいぜい標準をやや下回っているという程度であり、解雇事由や退職事由に相当するほど著しく不良であるとはいえない。
 以上によれば、債権者は、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「高年法」という。)及び債務者の継続雇用制度に基づき、年齢を除く解雇事由又は退職事由に該当する事情がない限り、令和2年7月20日の定年退職後も債務者に再雇用される立場にあり、現に本件合意が締結され、年齢を除く解雇事由又は退職事由に該当する事情も認められなかったのであるから、本件合意に定められた条件で再雇用されるものと期待することには合理的な理由があると認められる一方、債務者において、本件就業規則抵触条項に定める解除条件を充足したとして本件合意を解除し、債権者を再雇用しないことは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当とは認められないから、債務者による上記解除は無効である。したがって、債権者と債務者との間には、同月21日から、本件合意に定められた条件で嘱託雇用契約が存在しているものと認められる。
(3)債務者は、高年法は私法上の効力を有するものではなく、事業主に個々の労働者に対する再雇用義務を直接課すものではない旨主張する。しかし、本件においては、債務者に、継続雇用制度に関する就業規則や労使協定が存在している上、債権者と債務者との間で本件合意が締結されているのであり、上記就業規則及び労使協定並びに本件合意を解釈するに当たり、高年法の趣旨を考慮することが許されないものではない。