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ID番号 09513
事件名 未払賃金請求控訴事件
いわゆる事件名 Hプロジェクト(未払賃金請求)事件
争点 芸能人の労働者性
事案概要 (1)本件は、亡B(以下「B」という。)の相続人である控訴人ら(Bの両親)が、Bとアイドル活動等に関する専属マネジメント契約等を締結していた被控訴人(Hプロジェクト株式会社)に対し、Bは労働基準法上の労働者であると主張し、Bが上記契約等に基づいて従事した販売応援業務に対する対価として支払われた報酬額は、最低賃金法所定の最低賃金額を下回るとして、労働契約に基づく賃金請求権として、上記報酬額と最低賃金法所定の最低賃金額との差額等の支払を求める事案である。
 原審判決は、Bの労働基準法上の労働者性を否定し、控訴人らの請求を棄却したため、これを不服として控訴したものである。
(2)判決は、控訴人らの請求はいずれも理由がないと控訴を棄却した。
参照法条 労働基準法9条
体系項目 労基法の基本原則 (民事)/ 労働者/ (1) 労働者の概念
裁判年月日 令和4年2月16日
裁判所名 東京高裁
裁判形式 判決
事件番号 令和3年(ネ)4178号
裁判結果 控訴棄却
出典 D1-Law.com判例体系
審級関係 上告、上告受理申立て
(令和4年9月7日最高裁三小決定:棄却、不受理)
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則 (民事)/ 労働者/ (1) 労働者の概念〕
(1)Bが被控訴人から支払を受けた報酬についてペナルティ・相殺他として控除を受けたのは、本件報酬等規程等においてBが負担するものとされている傷害保険料等の実費、破損した靴の費用、被控訴人が東京で行われるイベントに参加することを希望したBのために立て替えた交通費及び宿泊費等であり、ポイントが減らされているのも忘れ物又は遅刻によるものであってイベントやレッスンに参加しなかったことによるペナルティを課されたことはなかったことも考慮すれば、上記罰金やペナルティの定めが存在することにより、Bがイベント等の活動に参加するか否かを決めるに当たってその意思決定に影響を受け、イベント等の活動への参加の諾否の自由を妨げられたとは認められない。
(2)控訴人らは、本件グループのメンバーの農業アイドルとしての活動による売上げが被控訴人の売上げを支えており、特にBは本件グループにおいて平成29年度の売上げがトップであり、本件グループの中心的存在であったことからすれば、Bの活動は、他人である被控訴人のための労働であり、Bは、労務の提供をする者に当たると主張する。
 しかし、役務の提供を受ける者がそのことで利益を得ることが役務の提供者の労働者性を判断する要素とはならないというべきである。
 また、控訴人らは、本件において労働者性を判断するに当たり、Bが当時16歳であったことを考慮すべきであり、本件契約における制限条項の存在自体が、事実上、Bに対して多大な影響力を有しており、精神的な拘束力も強かったと主張するが、Bは、イベント等について自らの都合により不参加とすることがあり、被控訴人がBに対しイベントへの参加を強制することがあったとは認められず、控訴人らの上記主張する点を考慮しても、上記判断は左右されない。