ID番号 | : | 09515 |
事件名 | : | 損害賠償請求控訴事件(671号)、同附帯控訴事件(847号、874号) |
いわゆる事件名 | : | 日本郵便事件 |
争点 | : | 上司の暴行による職場環境配慮義務 |
事案概要 | : | (1)本件は、日本郵便株式会社(以下「被控訴人会社」という。)のD郵便局において、期間雇用社員として勤務していた控訴人(女性)が、被控訴人会社の社員であり上司であった被控訴人YからD郵便局内において控訴人の背後からその口付近にガムテープを貼って剥がす行為(以下「本件行為」という。)を受けて下口唇の皮がまばらに剥がれ下口唇全体が赤く腫れ上がるなどの傷害を負い、その後の被控訴人会社の不適切な対応も相まって、精神疾患が発症又は悪化したなどとして、被控訴人Yに対しては、不法行為に基づき、被控訴人会社に対しては、使用者責任又は安全配慮義務違反若しくは職場環境配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づき、1712万2277円及びこれに対する不法行為日から支払済みまで遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 (2)一審判決(熊本地裁玉名支部)は、被控訴人会社の職場環境配慮義務違反を認めた上で、過失相殺を4割として、控訴人に対し被控訴人会社と被控訴人Yが連帯して約195万円の支払うことを命じた。 これを不服とし控訴人が約313万円の損害賠償等を求め控訴し、これに対し被控訴人会社及び被控訴人Yが控訴人の訴えの棄却を求め付帯控訴したものである。 (3)判決は、被控訴人会社の職場環境配慮義務違反を認めた上で、過失相殺を2割として、控訴人に対し被告会社と被控訴人Yが連帯して約259万円の支払うことを命じた。 |
参照法条 | : | 労働契約法5条 民法722条 |
体系項目 | : | 労働契約 (民事)/ 労働契約上の権利義務/ (24) 職場環境調整義務 |
裁判年月日 | : | 令和4年12月21日 |
裁判所名 | : | 福岡高裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 令和4年(ネ)671号 /令和4年(ネ)847号 /令和4年(ネ)874号 |
裁判結果 | : | 原判決変更(671号)、附帯控訴棄却(847号、874号) |
出典 | : | D1-Law.com判例体系 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔 労働契約 (民事)/ 労働契約上の権利義務/ (24) 職場環境調整義務 〕 (1) 控訴人の被控訴人会社に対する請求は、被控訴人Yと連帯して259万2239円及びこれに対する令和2年2月18日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、被控訴人Yに対する請求は、259万3727円及びこれに対する平成27年11月12日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金(ただし、259万2239円及びこれに対する令和2年2月18日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の限度で被控訴人会社と連帯して)の支払を求める限度で理由があると判断する。 (2) 控訴人の精神症状の発症時期、内容及び経過をみると、本件行為が勤務時間中に突然行われたものであることや、女性でありながら外貌に外傷を負うなど心理的負荷が相当程度強いものであったことや、G局長の対応が控訴人の精神状態の悪化に寄与していることを踏まえても、控訴人の精神症状の内容及び程度は、本件行為及び被告会社の義務違反によって通常発生する程度・範囲を超えているものと認められる。 以上の諸事情を考慮すると、損害の公平な分担という見地から、民法722条の類推適用により、損害額について2割を減額するのが相当である。 |