ID番号 | : | 09518 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | ヤマサン食品工業事件 |
争点 | : | 定年後再雇用契約の解除の有効性 |
事案概要 | : | (1)被告(ヤマサン食品工業株式会社)と正社員として雇用契約を締結して定年まで勤務してきた原告が、被告との間で、定年翌日を始期とする嘱託雇用契約を締結していたにもかかわらず、被告から、原告が譴責の懲戒処分を受けたことを理由に、上記嘱託雇用契約を解除する旨の通知を受け、定年後の再雇用を拒否されたところ、このような合意の解除は、客観的に合理的な理由及び相当性に欠け、権利の濫用に当たり無効であるなどと主張して、①被告に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、②嘱託雇用契約に基づく未払の賃金、賞与等の支払、③上記解除等は不法行為に当たるとし、不法行為に基づく損害賠償の支払を求める事案である。 (2)判決は、嘱託雇用契約の解除は無効として、(1)の①②の請求を認容し、③については理由がないとして棄却した。 |
参照法条 | : | 労働契約法19条 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条 |
体系項目 | : | 退職 / 4 定年・再雇用 |
裁判年月日 | : | 令和4年7月20日 |
裁判所名 | : | 富山地裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 令和2年(ワ)328号 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 労働判例1273号5頁 D1-Law.com判例体系 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔退職 / 4 定年・再雇用 〕 (1)被告は、高年法は私法上の効力を有するものではなく、事業主に個々の労働者に対する再雇用義務を直接課すものではない旨主張する。しかし、本件においては、被告に、継続雇用制度に関する就業規則や労使協定が存在している上、原告と被告との間で本件合意が締結されているのであり、上記就業規則及び労使協定並びに本件合意を解釈するに当たり、高年法の趣旨を考慮することが許されないものではない。 (2)定年前約2年間における原告の人事評価の結果を全体としてみると、被告の人事評価制度やそれに基づく査定を前提としても、せいぜい標準をやや下回っているという程度であり、解雇事由や退職事由に相当するほど著しく不良であるとはいえない。 以上によれば、原告は、高年法及び被告の継続雇用制度に基づき、年齢を除く解雇事由又は退職事由に該当する事情がない限り、令和2年7月20日の定年退職後も被告に再雇用される立場にあり、現に本件合意が締結され、年齢を除く解雇事由又は退職事由に該当する事情も認められなかったのであるから、本件合意に定められた条件で再雇用されるものと期待することには合理的な理由があると認められる一方、被告において、本件就業規則抵触条項に定める解除条件を充足したとして本件合意を解除し、原告を再雇用しないことは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当とは認められないから、被告による本件解除は無効である。 (3)本件において、原告に自宅待機命令違反という就業規則違反事由があったことは確かであり、本件合意には本件就業規則抵触条項が定められていて、同事由はこの条項に該当し得るといえること、本件解除が有効であるか否かは、高年法の趣旨などを踏まえ、同条項をどのように解釈、評価すべきかと密接に関連し、同条項の解釈及び評価が、一見して明白に、かつ、一義的に決まるものとはいえないから、結果として、本件解除が無効であったとしても、被告が、本件就業規則抵触条項を適用し本件解除をしたことが、不法行為に該当すると当然にいえるものではない。 |