ID番号 | : | 09524 |
事件名 | : | 文書提出命令申立事件 |
いわゆる事件名 | : | JYU―KEN事件 |
争点 | : | タイムカード提出の要否 |
事案概要 | : | (1)時間外勤務手当等請求事件の本訴原告が申立人となって、相手方(本訴被告である株式会社JYU-KEN)に対し、令和2年6月16日以降のタイムカードの提出を求める申立事件である。これに対し、相手方は、申立人が提出を求めている本件文書(該当期間のタイムカード)については、現在、保有又は保管(所持)していないこと、未払賃金につき業務日報メールに基づいて入力したものを提出しており、多く見積もっても19万1263円(13万1457円+5万9806円)程度であるから、申立人の本件文書提出命令の申立ては理由がないとして主張している。 (2)裁判所は、申立てを認容し、相手方に対し令和2年6月16日以降の申立人の出退勤時刻が記載されているタイムカードを提出するよう命じた。 |
参照法条 | : | 民事訴訟法220条 |
体系項目 | : | 労働時間 (民事)/ 労働時間の概念/ (10) タイムカードと始終業時刻 |
裁判年月日 | : | 令和4年9月16日 |
裁判所名 | : | 東京地裁立川支部 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 令和4年(モ)105号 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働経済判例速報2512号20頁 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔 労働時間 (民事)/ 労働時間の概念/ (10) タイムカードと始終業時刻〕 (1)一件記録によれば、相手方の従業員に関する出退勤時刻は、Q1というソフトウェアを使用したタイムカードにより行われており、平成31年2月1日から令和2年6月15日までのタイムカードの出退勤時刻の記録については、従業員であった申立人が自らQ1から印刷したものを提出していること、令和2年6月頃に労働基準監督署が介入したことを契機として、Q1内のタイムカードがロックされたうえ、業務用PCの持ち出しが禁止されてしまい、申立人は、令和2年6月16日以降令和2年7月31日(申立人の退職日)までのタイムカードが入手できず、本件訴訟に証拠として提出できていないことが認められる。上記事実によれば、申立人が提出を求めている本件文書(該当期間のタイムカード)については、当然、相手方が管理し、所持しているものと認めるべきである。 (2)上記の点に関し、相手方は、申立人が提出を求めている本件文書(該当期間のタイムカード)については、現在、保有又は保管(所持)していない旨主張している。しかし、タイムカードについては、「労働関係に関する重要な書類」として、使用者が5年間(完結の日が起算点)記録保存の義務を負っているもので(令和2年法律第13号改正により、従前の3年間が5年間と改正された。)、しかも、違反した場合は罰金の罰則もあり、また、電子データであるので、保管するために場所をとったり、紛失したりするようなこともなく(上記データをあえて削除しているとすれば、相手方が自ら不利になることを避けるために行っているとしか考えられない。)、相手方が現在所持していないとは考え難い。 (3)申立人は、業務日報を送信した時刻が現実に業務が終了した時刻ではないと主張しており、本件訴訟では、申立人は、タイムカードの出退勤時刻を基準として時間外労働時間を計算すべきで、多くの裁判例でも同様であると主張し、相手方が提出する業務日報メールの提出で必要性が充たされるとか、公平であるとはいえない。 (4)以上から、相手方は、本件文書(該当期間のタイムカード)を所持していると認めるべきで、民事訴訟法220条4号(同号の除外事由がない文書)により、文書提出義務を負っていると認められる。 |