ID番号 | : | 09525 |
事件名 | : | 文書提出命令に対する抗告事件 |
いわゆる事件名 | : | JYU―KEN事件 |
争点 | : | タイムカード提出の要否 |
事案概要 | : | (1)基本事件は、時間外勤務手当等請求事件の本訴原告である相手方が、雇用者であった被告である抗告人(本訴被告である株式会社JYU-KEN)に対して、時間外手当等の支払を求める事案であるところ、相手方が、相手方の出退勤時刻が記録されているタイムカード(データを印刷したもの)を抗告人が所持しているとして、当該文書の提出命令(民事訴訟法220条4号)を申し立て、原審は抗告人に同文書の提出を命じた。抗告人は、これを不服として、本件抗告を申し立てた。 (2)裁判所は、原審と同様、抗告人に対し、タイムカードの提出を命じるのが相当であると判断し、抗告を棄却した。 |
参照法条 | : | 民事訴訟法220条 |
体系項目 | : | 労働時間 (民事)/ 労働時間の概念/ (10) タイムカードと始終業時刻 |
裁判年月日 | : | 令和4年12月23日 |
裁判所名 | : | 東京高裁 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 和4年(ラ)2145号 |
裁判結果 | : | 抗告棄却 |
出典 | : | 労働経済判例速報2512号18頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔 労働時間 (民事)/ 労働時間の概念/ (10) タイムカードと始終業時刻〕 (1) 相手方は、相手方の出退勤の時間を立証するためにタイムカードの取調べが必要であるとし、抗告人において使用していたタイムカードは、相手方に割り当てられた業務用PC端末でQ1 office(書証略、Q1株式会社が提供するグループウェア)を起動することで表示され、印刷も可能であるところ、令和2年6月頃に労働基準監督署の調査を受けた際に、Q1内のタイムカード機能がロックされ、上記PC端末も持ち出せないようになったが、同タイムカードは抗告人が契約しているQ1内に所在するデータであり、また、抗告人に労働基準法109条の「労働関係に関する重要な書類」として保存義務のある保存期間内の証拠であるから、令和2年6月16日から同年7月31日までのタイムカードを抗告人において所持していることが明らかであって、民事訴訟法220条4号により提出義務を負うと主張したのに対し、抗告人は、相手方主張のタイムカードは保有又は保管していない、これまでと同様、出退勤管理は業務日報メールで行っており、相手方が提出を求める期間の業務日報メールは書証として提出済みであると主張した。 (2) 抗告人は、〈1〉従業員の勤怠管理は業務日報メールで行っており、相手方主張の従業員にQ1のタイムカード機能への入力を命じたこともなく、それにより賃金計算をしたこともない、同機能は出退勤しなくとも記録を行うことが可能であり、自動入力された時間を変更することができるなど内容の信用性にも限界がある、また、抗告人がQ1社に問い合わせをしたが抗告人のタイムカードの情報は残されていないと回答を受け、相手方からの情報も得られずタイムカードの情報を取得できなかった、〈2〉基本事件においては業務日報が提出されており、仮に相手方主張のタイムカードがあったとしても、上記のような信用性の高いとはいえないものを取り調べる必要はない、と主張する。 しかしながら、〈1〉については抗告人において、上記のタイムカード機能を使用していたことが認められ、そうであれば、導入した抗告人においてタイムカードのデータを保持しているというべきであって、利用契約の契約者である抗告人においてQ1社から入手して提出することは可能であると考えられる。なお、タイムカードの信用性などは文書の所持、保有の事実を左右する事情ではない。〈2〉についても、タイムカードの信用性は審理の中で判断されるものであり、受訴裁判所においても必要性があるとしているのであるから、抗告人の主張では本件のタイムカードの取調べの必要性がないとはいえないのであり、抗告人の主張は採用できない。 |