全 情 報

ID番号 09533
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 函館バス事件
争点 定年後再雇用の拒否の有効性
事案概要 (1) 本件は、被告(函館バス株式会社)と雇用契約を締結し、正社員の運転者として勤務していた原告が、有給休暇の欠勤への不正変更を組織的に、かつ、多数回に行ったとして就業規則60条4号(素行不良にして職場の風紀又は秩序を乱したとき)、11号(不正不義の行為をなし、従業員としての体面を汚した時)、12号(故意又は過失により会社に傷害を与え、又は会社の体面を汚した時)の懲戒事由に該当し解雇事由があるため就業規則等が定める定年後再雇用制度所定の要件を満たさないとして、原告が再雇用について承諾の意思表示をしたにもかかわらず、被告はこれを拒絶した(以下「本件再雇用拒否」という。)。
原告は、この拒絶は客観的に合理的な理由を欠き、社会的相当性を欠く旨を主張して、被告に対し、雇用契約に基づき、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、再雇用の始期の翌日から本判決確定の日までの基本給等、夏季・冬季賞与等の支払を求める事案である。
(2)判決は、本件再雇用拒否には客観的に合理的な理由が認められず、社会通念上相当であるとはいえないとして、原告の雇用契約に基づく地位確認請求及び同契約に基づく賃金(勤続手当を除く。)の請求を認めた。
参照法条 高齢者雇用安定法9条2項
体系項目 解雇 (民事)/ 3 解雇権の濫用
裁判年月日 令和4年12月13日
裁判所名 函館地裁
裁判形式 判決
事件番号 令和3年(ワ)87号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 D1-Law.com判例体系
審級関係 控訴(札幌高裁:令和5年8月22日原判決変更)
評釈論文
判決理由 〔 解雇 (民事)/ 3 解雇権の濫用 〕
(1)当裁判所は、原告は、被告の定年後再雇用制度の要件を満たすとともに、令和3年4月29日の定年に際し被告の定年後再雇用制度による再雇用について承諾の意思表示をしたと認められるところ、組合活動に従事した組合員の休暇は有給休暇ではなく欠勤として扱われるとともに、給与や賞与の算定にも反映される(以下「本件欠勤処理」という。)ことへの関与を理由として被告がこれを拒絶したことには客観的に合理的な理由が認められず、社会通念上相当であるとはいえないから、上記の承諾の意思表示により原告と被告の間には就業規則や平成29年協定の内容等を踏まえた雇用契約が成立したと認められるため、原告の請求のうち雇用契約に基づく地位確認請求及び同契約に基づく賃金(勤続手当を除く。)の請求は理由があるが、勤続手当の支払を求める請求については就業規則や平成29年協定等に定めがないため、理由がない旨判断する。
(2)組合活動のための休暇に関する労働組合と被告との交渉経緯などのほか、当該労働組合の書記長が本件欠勤処理を行うに当たっては、有給休暇から無給の組合休暇に振り替えられる結果、休暇を取得した日については改めて組合員の賃金を欠勤扱いとして計算する必要が生じるところ、この点については、労務課長が給与に係る事務と連携しつつ作成した一覧表を作成して労働組合に交付していたと認められることなど、労務課長の関与の下に行われてきたこと等を考慮すると、原告が本件欠勤処理に関与したことが、就業規則60条4号、11号又は同条12号所定の懲戒事由に該当するということはできない。