ID番号 | : | 09534 |
事件名 | : | 賃金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 阪神電気鉄道事件 |
争点 | : | 勤務割表による勤務指定日の年休の時季変更権 |
事案概要 | : | (1)鉄道事業を営む被告(阪神電気鉄道株式会社)に雇用されて車掌として勤務していた原告は、平成30年8月19日に同年9月19日の年次有給休暇についての時季指定をしたところ、被告により時季変更権を行使されたが出勤せず、翌20日に欠勤を理由とする注意指導を受け、1日分の賃金を減給された。 本件は、原告が、上記時季変更が違法であると主張して、被告に対し、〈1〉雇用契約に基づき、減給された賃金等〈2〉労働基準法114条に基づき、上記賃金と同額の付加金等、〈3〉不法行為に基づき、違法な時季変更権の行使を前提とする注意指導による慰謝料50万円等の各支払を請求する事案である。 (2)判決は、被告の時季変更権は適法であるとして、原告の請求を棄却した。 |
参照法条 | : | 労働基準法39条 |
体系項目 | : | 年休 (民事)/ 3 時季指定権 |
裁判年月日 | : | 令和4年12月15日 |
裁判所名 | : | 大阪地裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 令和2年(ワ)58号 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例1299号20頁 労働経済判例速報2512号22頁 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | 白石浩亮・経営法曹218号67~75頁2023年12月 |
判決理由 | : | 〔年休 (民事)/ 3 時季指定権〕 (1) 勤務割における勤務予定日につき年次休暇の時季指定がされた場合に、使用者としての通常の配慮をすれば代替勤務者を確保して勤務割を変更することが客観的に可能な状況にあったか否かについては、当該事業場において、年次休暇の時季指定に伴う勤務割の変更が、どのような方法により、どの程度行われていたか、年次休暇の時季指定に対し使用者が従前どのような対応の仕方をしてきたか、当該労働者の作業の内容、性質、欠務補充要員の作業の繁閑などからみて、他の者による代替勤務が可能であったか、また、当該年次休暇の時季指定が、使用者が代替勤務者を確保しうるだけの時間的余裕のある時期にされたものであるか、更には、当該事業場において週休制がどのように運用されてきたかなどの諸点を考慮して判断されるべきである。上記の諸点に照らし、使用者が通常の配慮をしたとしても代替勤務者を確保して勤務割を変更することが客観的に可能な状況になかったと判断しうる場合には、使用者において代替勤務者を確保するための配慮をしたとみうる何らかの具体的行為をしなかったとしても、そのことにより、使用者がした時季変更権の行使が違法となることはないものと解するのが相当である(最高裁平成元年7月4日第三小法廷判決・民集43巻7号767頁参照)。 (2) 被告は、勤務割の中に予備循環を設けたり、W勤務を命じたりするなどして代替勤務者を確保していたところ、9月19日については、原告に先行して年休申請した車掌や社内行事のために勤務できない車掌がおり、原告に対して同日の年休を付与すると、確保していた代替勤務者を超える補充要員が必要となり、勤務割で確保された公休日の出勤回避やW勤務の上限の遵守といった、Q1列車所において労使合意により実施されてきた取扱いに反しなければ、補充人員を確保できない状況にあったものということができる。これらの事情に照らすと、本件時季指定が1か月前にされたものであり、その間に使用者が通常の配慮をしたとしても、同日は、原告の代替勤務者を確保して勤務割を変更することが客観的に可能な状況にはなかったというべきである。 (3) 本件時季変更は適法であるから、原告が9月19日に出勤しなかったことは、本来得るべき所属部長の承認を得ずになされたものであって、欠勤に該当する。したがって、これを理由としてされた本件注意指導は適法なものであって、原告に対する不法行為を構成しないというべきである。 |