ID番号 | : | 09540 |
事件名 | : | 地位確認等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 国立大学法人東北大学(雇止め)事件 |
争点 | : | 12年間勤務していた有期雇用労働者の雇止め |
事案概要 | : | (1)本件は、被控訴人(国立大学法人東北大学)の設置する大学院において、平成18年度から平成29年度まで時間雇用職員(22年度は謝金業務期間)として勤務していた控訴人が、平成30年度以降の有期労働契約の更新を拒絶した被控訴人に対し、労働契約法19条に基づき有期労働契約が更新され、同法18条に基づき期間の定めのない労働契約が成立したとみなされるなどと主張して、〈1〉労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、〈2〉労働契約に基づく賃金等の支払を求め、さらに、〈3〉不法行為に基づく慰謝料等の支払を求めた事案である。 一審判決(仙台地裁)は、本件において労働契約法19条各号の要件は認められず、いわゆる雇止め法理の適用もないから、労働契約上の地位確認請求及び労働契約に基づく賃金支払請求はいずれも理由がなく、また、本件雇止めが違法であるとはいえないから、不法行為に基づく損害賠償請求も理由がないと判断して、控訴人の請求をいずれも棄却した。このため、これを全部不服とする控訴人が本件控訴を提起した。 (2)控訴審判決は、控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断するとして、控訴人の請求を棄却した。 |
参照法条 | : | 労働契約法19条 |
体系項目 | : | 解雇 (民事)/ 短期労働契約の更新拒否 (雇止め) |
裁判年月日 | : | 令和5年1月25日 |
裁判所名 | : | 仙台高裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 令和4年(ネ)257号 |
裁判結果 | : | 控訴棄却 |
出典 | : | 労働判例1286号17頁 |
審級関係 | : | 上告、上告受理申立て(令和5年5月25日棄却、不受理) |
評釈論文 | : | 山手貴文・経営法曹220号88~94頁2024年6月 |
判決理由 | : | 〔解雇 (民事)/ 短期労働契約の更新拒否 (雇止め)〕 (1)控訴人は、労働契約法19条1号ないし2号所定の「雇用継続への合理的期待」(第1要件)については、同条柱書き所定の雇止めに対する解雇権濫用法理の類推適用(第2要件)と相補的に審査されるべきであって、第2要件の審査によって更新上限条項が無期転換権発生回避のために設けられたと認められる場合には、当該条項によって生じる影響を除外して要件充足性の有無を判断すべきである、無期転換権発生回避を目的とした更新上限条項に基づいて雇止めを行う場合には、当該雇止めは第2要件の定める「客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性」に抵触することとなり、この場合には、第1要件の審査である程度の雇用継続への合理的期待が認められるならば、労働契約法19条に基づき有期労働契約更新の効果を認めるべきであると主張する。 しかしながら、控訴人の上記主張は、労働契約法19条の文理にそぐわない独自のものといわざるを得ず、採用できない。 (2)控訴人は、労働契約法19条2号の合理的な期待の有無については、有期労働契約の締結から雇止めまでの一切の事情が総合考慮されるべきであるところ、原判決は、平成26年3月31日時点における平成28年3月31日を超える契約更新を期待する合理的理由を否定した上で、その後に生じた事情のみを考慮して、控訴人につき本件雇止めの時点で契約更新を期待する合理的理由があったとは認められないとしているとして、このような判断手法は、有期労働契約の締結(平成18年4月1日)から雇止めまでの一切の事情を総合考慮していないことになるから誤りである旨を主張する。 しかしながら、原判決は、本件上限条項の施行前日である平成26年3月31日時点で契約更新を期待する合理的理由が生じていたとすれば、本件上限条項の施行によりその合理的理由が直ちに消滅することにはならないことから、まず、同日時点の合理的理由の有無を判断したものであって、そのような判断過程自体は至極合理的である。そして、原判決は、本件雇止めがされた平成30年3月31日時点における合理的な期待の有無を判断するに際し、平成18年4月1日から平成26年3月31日までの経過についても当然総合考慮しており、この間の経過を除外して判断したものでないことも明らかである。 控訴人の上記主張は原判決を正解しないもので採用できない。 |