全 情 報

ID番号 09546
事件名 損害賠償請求控訴事件
いわゆる事件名 グッドパートナーズ事件
争点 契約更新を通告した後の雇止めの有効性、中間収入の控除
事案概要 (1) 控訴人は、主に介護の仕事を紹介する人材派遣会社である被控訴人との間で有期労働契約(平成31年2月3日~同年3月31日)を締結し、有料老人ホームに派遣され夜勤専従の介護福祉士をしていた。控訴人は、被控訴人から、同年2月21日、本件契約が令和元年5月31日までの2か月間更新されることが確定した旨の電子メール(以下「本件メール」という。)を受信したが、その後、控訴人は、同年2月25日の勤務時間終了後、本件施設の副施設長に対し、施設職員による利用者への虐待行為があったとして、その旨報告し、行政機関にも同内容の通報(以下「本件通報行為」という。)を行うとともに、被控訴人に報告したところ、被控訴人は、同年3月6日、控訴人に対し、契約更新を取り消し、新たに仕事の紹介もしないと通知し、平成31年3月31日をもって有期労働契約につき雇止め(以下「本件雇止め」という。)をした。このため、控訴人が、本件雇止めは無効である旨主張して、被控訴人に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに(請求1)、上記労働契約に基づき、同年4月分から令和3年12月分までの未払賃金等の支払(請求2)並びに令和4年1月分以降の未払賃金の支払を求め(請求3)、さらに、本件雇止めが不法行為に当たると主張して、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料等の支払(請求4)を求める事案である。
 原審(東京地裁)は、請求3のうち、判決確定後の賃金の支払を求める部分については確認の利益がないとして訴えを却下した上で、本件雇止めは無効であるが、控訴人と被控訴人の雇用契約は令和元年5月31日を終期とする有期雇用契約であるから同日をもって終了し、かつ、本件雇止めによる控訴人の精神的苦痛は本件雇止めの無効及びその後の未払賃金の請求が認められることにより慰謝されたなどとして、請求2のうち平成31年4月分及び令和元年5月分の給与から、中間収入を控除した40万5570円及びこれに対する令和2年1月22日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余の請求を棄却したところ、これを不服とする控訴人が本件控訴を提起した。
(2)判決は、原審と同様、本判決確定後の賃金の支払を求める部分は訴えの利益がなく、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める部分及び本件雇止めを理由とする不法行為に基づき損害金の支払を求める部分についてはいずれも理由がないが、原審と異なり、未払賃金の支払を求める部分については、56万2244円及びこれに対する令和2年1月22日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるとした。
参照法条 労働契約法19条
公益通報者保護法5条
民法536条2項
体系項目 解雇 (民事) /短期労働契約の更新拒否 (雇止め)
賃金 (民事)/ 休業手当/ (2) 労基法26条と民法536条2項の関係
裁判年月日 令和5年2月2日
裁判所名 東京高裁
裁判形式 判決
事件番号 令和4年(ネ)3653号
裁判結果 原判決一部変更
出典 労働判例1293号59頁
審級関係 上告、上告受理申立て(令和5年9月28日上告棄却、上告不受理)
評釈論文
判決理由 〔賃金 (民事)/ 休業手当/ (2) 労基法26条と民法536条2項の関係〕
(1)平成31年2月3日(被控訴人における就労日)から同年3月31日(契約の満了日)までの給与額の合計は75万2301円(2月分35万4511円、3月分39万7790円)であるから、同期間の1日当たりの賃金額は1万3198円(75万2301円÷57日)となり、その4割を限度として中間収入を控除した後の賃金額は7919円となる(1万3198円×0.6)。
 ア 平成31年4月分 
  控訴人が別会社で稼働したのは同月のうち16日から30日までであるから、同月1日から同月15日までの間については中間収入の控除は認められないが、同月16日から30日までについては中間収入の控除が認められる。
 そうすると、同月の未払賃金額は次のとおりとなる。
 (ア) 同月1日から15日まで 19万7970円
    1万3198円×15日分
 (イ) 同月16日から30日まで 11万8785円
    7919円×15日分
 イ 令和元年5月分 24万5489円
       7919円×31日分
 ウ 上記の合計56万2244円
 なお、控訴人が原審において主張する中間収入控除後の未払給与額の計算方法では平均賃金の4割を超える部分を控除することにもなり得るものであるが、他方において控訴人は中間収入を控除する前の未払賃金額を全額請求していることを踏まえると、労働基準法12条1項及び最高裁昭和36年(オ)第522号同37年7月20日第二小法廷判決・民集16巻第8号1656頁に忠実な形で上記のような計算方法を採ることを否定する趣旨ではないと解される。