ID番号 | : | 09553 |
事件名 | : | 地位不存在確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 大宇宙ジャパン事件 |
争点 | : | 試用期間中の解雇の有効性 |
事案概要 | : | (1)本件は、情報通信システムの開発、運用等を目的とする株式会社である原告(大宇宙ジャパン株式会社)が、中華人民共和国の国籍を有する被告と令和3年5月14日頃、仕事の内容をシステム・ソフトウェア開発関連業務全般とし、試用期間を同年6月1日から同年8月31日までとする雇用契約(以下「本件雇用契約」という。)を締結したが、試用期間満了をもって被告を有効に解雇した旨主張して、被告に対し、被告が雇用契約上の権利を有する地位にないことの確認を求めるとともに、使用貸借契約終了に基づく目的物返還、履行遅滞に基づく損害賠償を求める事案である。 (2)判決は、本件解雇は有効であるとして、原告の請求を認容した。 |
参照法条 | : | 労働契約法16条 |
体系項目 | : | 労働契約 (民事)/ 試用期間/ (2) 本採用拒否・解雇 |
裁判年月日 | : | 令和5年2月22日 |
裁判所名 | : | 東京地裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 令和4年(ワ)8296号 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | D1-Law.com判例体系 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約 (民事)/ 試用期間/ (2) 本採用拒否・解雇〕 (1)本件解雇は本件雇用契約で定められた試用期間中に行われており、法的には留保された解約権の行使に当たるところ、このような留保解約権の行使は、当該解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当として是認され得る場合にのみ許されるものと解するのが相当である(最高裁昭和43年(オ)第932号同48年12月12日大法廷判決・民集27巻11号1536頁参照)。 これを本件についてみると、被告は、原告との間で、本邦での滞在経験、IT関連の就労経験及び得意業務に関する履歴書等の記載に照らし、その経験と技能を原告において活用することを期待されて本件雇用契約を締結するに至ったものであるところ、〈1〉命じられた業務に不満を述べて従事せず、他の従業員を批判する言動を繰り返し、〈2〉コミュニケーション能力の不足等を理由に配属先候補の顧客から不採用の扱いとされたほか、〈3〉他の従業員と口論となったり、上長の指示又は許可に基づく他の従業員の行為(座席移動、個人用パソコンの持ち込み)について、十分に事実を確認することなく、関連部署等に対し問題を指摘したりして、他の従業員との間で複数回にわたって問題を起こしていた上、〈4〉原告の担当者からビザの不備を指摘された際には、入国管理局に赴くため無断で外出している。これらの各事実に照らせば、被告は、他の従業員と協調して業務を行う能力や、その前提となるコミュニケーション能力を欠いていたことは明らかである。 そして、被告の上長は、被告の協調性やコミュニケーションについて指導したものの、被告は、他の従業員の批判を繰り返すなどして自らの言動を改善しなかったというのである。 以上に照らすと、被告は、原告の就業規則6条1項1号(必要な事務又は技能を習得する能力がないと認められる場合)及び同項2号(勤務劣悪な場合)に該当し、留保解約権の行使としての本件解雇は、客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当というべきであるから、有効である。 (2)被告は原告の従業員としての資格を失っているから、原告の就業規則39条前段に基づき、被告は、原告に対し、本件使用貸借契約終了に基づく目的物返還債務として、本件物件を引き渡す債務を負っているということができる。 さらに、原告は、ノートパソコンを業者から月額6300円(消費税別)で賃借していることが認められ、被告に対し、履行遅滞に基づく損害賠償請求権として、試用期間満了後の令和3年9月1日から本件物件の引渡しに至るまで1か月6930円の割合による賃料相当損害金の支払を求める請求権を有しているといえる。 |