全 情 報

ID番号 10059
事件名 労働基準法違反被告控訴事件
いわゆる事件名 パチンコ遊技場事件
争点
事案概要  パチンコ店の名義を貸した者が「事業主」(労基法一二一条一項)にあたるか否かが争われた事例。
参照法条 労働基準法121条1項
体系項目 罰則(刑事) / 両罰規定
裁判年月日 1966年12月21日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (う) 829 
裁判結果 有罪
出典 下級刑集8巻12号1535頁/時報483号78頁/タイムズ208号203頁/家裁月報19巻9号135頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔罰則-両罰規定〕
 労働基準法一二一条一項本文にいわゆる事業主とは、通常事業利益の帰属者を意味するものと解すべきところ、そのゆえんのものは利益の帰属するところに責任を帰せしめるのが、公平の原理に適合し、行政犯の取締の目的にも合致するとされているからにほかならない。そして同条一項但書は、事業主に対する科罰の根拠を、事業主自身の注意義務違反すなわち過失に求めることを明らかにしている(この点判例は、単に『法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し所定の違反行為を為したときは、行為者を罰するのほか、その法人又は人に対しても亦同条の罰金刑を科する』とする規定形式をとるものについても、これをいわゆる過失推定規定と解している。最高裁判所昭和三二年一一月二七日、大法廷判決、集一一巻一二号三、一一三頁、同三三年二月七日、第二小法廷判決、集一二巻二号一一七頁、同三八年二月二六日、第三小法廷判決、集一七巻一号一五頁参照)のであるから、同条の事業主というためには、事業利益の帰属者であるというだけではなく違反の防止に必要な措置をなし得る立場にあるものであることを要することは明らかである。そして前記利益帰属者を処罰する趣旨にかんがみれば、事業利益の帰属者である以上、個人事業である場合においても、それが直接であると間接であるとを問わず、何らかの意味で違反防止に必要な措置をとり得る立場にあり、またこのような措置を期待することが、社会通念上苛酷と認められないものである限り、これを同条一項にいわゆる事業主と解するのが相当である。