全 情 報

ID番号 10128
事件名 職業安定法違反等被告事件
いわゆる事件名
争点
事案概要  業として、求人依頼者に職人等をあっ旋し、依頼者より手数料を受領する行為は、一個の行為にして職業安定法六四条一号の罪(三二条一項違反)と労基法一一八条の罪(六条違反)との二個の罪名に触れるとされた事例。
参照法条 労働基準法6条
労働基準法118条
職業安定法64条1号
体系項目 労基法総則(刑事) / 中間搾取
罰則(刑事) / 併合罪等
裁判年月日 1958年6月19日
裁判所名 最高一小
裁判形式 判決
事件番号 昭和32年 (あ) 3274 
裁判結果 破棄(自判)
出典 刑集12巻10号2236頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法総則-中間搾取〕
〔罰則-併合罪等〕
 しかし、職権をもつて調査すると、訴訟記録並びに第一審裁判所において取り調べた証拠に現われている本件犯罪の動機が主として雇主から依頼したものであること、その紹介した職業は、熊本県下の片田舎における瓦若しくは蒲鉾製造の職人又は農家の奉公人であること、被告人の犯罪経歴が道路交通取締法違反並びに失火罪によつて罰金に処せられたに過ぎないこと、その他被告人の資産、家族数等諸般の情状に照らし、原判決の維持した第一審判決の科した懲役六月の実刑は、その刑の量定が甚しく不当であつて、第一、二審判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。
 よつて、刑訴四一一条二号、四一三条但書に従い、主文第一項のとおりこれを破棄し、原審の維持した第一審判決の判示所為に対し法令を適用すると、有料の職業紹介事業を行つた点は、職業安定法三二条一項、六四条一号に、業として他人の就業に介入して利益を得た点は、労働基準法六条、一一八条に該当するところ、右は一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから、刑法五四条一項前段、一〇条を適用し、犯情の重いと認める職業安定法違反の刑に従つて処断すべく、所定刑中懲役刑を選択し、その刑期範囲内で被告人を主文第二項の刑に処し、情状刑の執行を猶予すべきものと認め同法二五条一項により主文第三項の期間刑の執行を猶予すべきものとし、第一審ないし当審の訴訟費用は、刑訴一八一条により主文第四項のとおり被告人に負担せしむべきものとし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。