全 情 報

ID番号 10139
事件名 労働基準法違反被告事件
いわゆる事件名 渡辺度器製作所事件
争点
事案概要  休憩時間の付与につき、使用者において、労働者が就労時間中適宜事実上休憩をとることを黙認していたというだけで、労基法上の休憩時間を与えたことになるか否かが争われた事例(否定)。
参照法条 労働基準法34条1項
労働基準法119条1号
体系項目 休憩(刑事) / 休憩時間の付与
裁判年月日 1957年10月8日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和32年 (う) 772 
裁判結果 棄却
出典 タイムズ76号48頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔休憩-休憩時間の付与〕
 原判決挙示の証拠を総合すれば判示株式会社(本件当時は株式会社Aと称する)の代表取締役たる被告人が右会社工員B外二十八名に対し判示第一覧表記載のようにその就業日にいずれも午前七時から午後五時までの間就労させるについてその間正午から午後一時まで一時間の休憩しか与えないで、一日につき九時間ずつ労働をさせ、一日につき一時間ずつ法定の労働時間をこえて労働をさせたことを認めることができ、本件記録を調査するも原判決はこの点において事実を誤認した違法があるとは認められない。被告人は右会社の工員等が午前午後の就労時間中適宜事実上一時間の休憩をとることを黙認していたのであるから違反にはならないと弁解するけれども、右工員等が所論のように毎日一時間ずつ昼休みの時間外に休憩をとつていたと云う点に関する被告人の供述は措信し難く他にこれを確認するに足る証拠はない。しかのみならず労働基準法第三十四条によれば、一日の労働時間が八時間を超える場合には少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないのであり右休憩時間は一斉に与えなければならないのであつて、これに異つた休憩時間を定めるには行政官庁の許可を受けることを要し、又右休憩時間は労働者をして自由にこれを利用させなければならないのであるから、被告人の主張するように労働者が適宜事実上休憩するのを黙認していたと云うのみではこれを労働基準法にいわゆる休憩時間を与えたと云うことにはならないと認めるのが相当である。故にこの点に関する論旨はこれを採用することができない。