全 情 報

ID番号 10150
事件名 労働基準法違反被告事件
いわゆる事件名 料理店「オアシス」事件
争点
事案概要  女子年少者を酒席に侍らせ、福祉に有害な業務に従事させたとして、経営者および経営一切に当たっていた者が起訴された事例につき、後者は労基法六三条二項の使用者か否かが争われた例(肯定)。
参照法条 労働基準法62条2項
体系項目 年少者(刑事) / 未成年者の危険有害業務
裁判年月日 1956年10月20日
裁判所名 富山家高岡支
裁判形式 判決
事件番号
裁判結果 有罪(罰金3,000円)
出典 家裁月報8巻12号109頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔年少者-未成年者の危険有害業務〕
 尚被告人等の弁護人は、被告人等は判示Aを雇う意思もなく又雇つたこともないから、被告人Y1は、Aの使用者ではない。従つて被告人Y1は無罪たるべきものであり且つ同被告人の違反行為を前提とする被告人Y2の所為もまた無罪たるべきものである、と主張する。
 なるほど、前掲各証拠を綜合すると、被告人等は、右Aが十八才未満であつたため、同女を雇傭する意思はなく、むしろ同女の雇傭方懇請を拒絶したことが認められるのである。
 しかしながら、労働基準法第六十三条第二項に所謂使用者とは、必ずしも雇傭関係に基くものに限られず、その他何らかの原因により十八才未満の者の行為を利用し得る地位にある者を指称するものと解するのが相当である。そこで前記各証拠を更に詳細に綜合検討すると、右Aが家に居ても面白くないというので、昭和三十年十一月十二日頃判示料理店「B」に至り被告人等に対し是非雇つてもらいたい旨懇請したが、被告人等は、Aが十八才未満であつたためこれを拒絶した。しかし、Aは、なおも家に帰れないからと、しきりに哀願するので、無下に同女を追い帰すこともできず、そのまま右B(兼被告人等居宅)に止宿させるに至つた。そして、何時とはなしに、Aは右Bの業務の手伝をし、被告人Y1もまたAの行為を利用し、やがて同被告人はAを酒席に侍らせるようになつた。このようにして、被告人Y1は、Aの行為を利用し、Aは同被告人に利用されるという関係が、おのずから双方の間にかもし出されたことが認められる。従つてAは同被告人方において勝手に止宿し、単に徒食していた者とはいえず、むしろ同被告人は右特殊な関係からAの行為を利用し得る地位にあつたものと認めるのが相当である。従つて、同被告人を前記法条に所謂使用者と解するを相当とするから、前記弁護人の主張は結局において採用できない。