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ID番号 10226
事件名 労働基準法、職業安定法違反事件
いわゆる事件名 労基法等違反事件
争点
事案概要  業として他人の就業に介入し利益を得たとして労基法、職安法違反で起訴された事件(有罪)。
参照法条 労働基準法6条
労働基準法8条
労働基準法118条
職業安定法32条1項
職業安定法60条1号
体系項目 労基法総則(刑事) / 適用事業 / 事業の概念
労基法総則(刑事) / 中間搾取
裁判年月日 1950年2月25日
裁判所名 名古屋高
裁判形式 判決
事件番号 昭和24年 (控) 1650 
昭和24年 (控) 1651 
昭和24年 (控) 1652 
裁判結果 有罪(懲役10か月,懲役8か月,懲役6か月)
出典 高裁刑特報7号2頁/裁判資料55号540頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法総則-中間搾取〕
 被告人等は何れも所定の許可なきに拘らず営利の目的を以て単独又は共謀の上別紙一覧表記載の通り、昭和二十三年八月二十六日頃から同二十四年六月二十日頃迄の間に数回若くは十数回に亘りA外八名を三重県志摩郡鳥羽町待合業B方外十三ケ所(何れも待合業)に接客婦として紹介周旋し、報酬として合計金四万三千円を収得し依つて夫々業として他人の就業に介入して利益を得且つ有料の職業紹介の事業を為したものである。
 法律に照すと被告人等の判示所為は孰れも労働基準法第六条、第百十八条、職業安定法第三十二条第一項、第六十条第一号に該当するが、右は一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるから刑法第五十四条第一項前段、第十条に則り重いと認める職業安定法違反の罪の刑に従ひ、所定刑中懲役刑を選択し其所定刑期の範囲内で被告人Y1ともを懲役十月に、同Y2を懲役八月に、同Y3を懲役六月に各処する。
〔労基法総則-適用事業-事業の概念〕
 依つて按するに昭和二十二年一月十五日勅令第九号に依り所謂公娼制度の廃止せられたことは寔に所論の通りである。従つて其後認許せられた貸席業(待合を含む)料理業、又は特殊喫茶店等は客の集会、飲食、娯楽等の為め、場所又は設備を提供する営業を指すのであつて、決して売淫行為を目的とするもので無いことは自明の理である。従つて右の営業に従事する所謂「接客婦」なるものも亦正当の業務であるから素より法律上の保護を受けるものと謂はなければならない。弁護人は何れも本件の雇傭契約は売淫行為を其内容とするものであるから労働基準法又は職業安定法の対象とならないものであると論ずるが、前述の通り雇傭主の営業が適法行為であり、該営業に従事せしめる為の雇傭契約である以上は之と異なる売淫行為を其目的又は内容とする道理が無いと謂はなければならない。故に事実上之等の被傭者が接客の機会を利用して売淫行為を為すことがあるとしても、其れは其者の任意の意思に基いて行はれる違法行為であるから前記雇傭契約の趣旨とは判然区別されなければならないものである。此理は弁護人指摘の各証拠に依るも之を覆すことができないから此点に関する論旨は何れも理由がない。