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ID番号 10254
事件名
いわゆる事件名 北海鉱山事件
争点
事案概要  労基法違反(賃金不払)に対する一二一条(両罰規定)の適用につき、但書の「違反防止に必要な措置」の意義が争われた事例(否定)。
参照法条 労働基準法24条2項
労働基準法121条
体系項目 賃金(刑事) / 賃金の支払い方法 / 定期日払い
罰則(刑事) / 両罰規定
裁判年月日 1950年11月4日
裁判所名 釧路地
裁判形式 判決
事件番号
裁判結果
出典
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金の支払い方法-定期日払い〕
〔罰則-両罰規定〕
 (三) 被告人の行為は前記(二)の(イ)の如く、復興金融金庫のから融資の口約があつたのに拘わらず、所謂経済九原則による融資停止のため、他の適法行為に出ることを期待し得なかつた所謂期待可能性なき行為である。
 よつて被告人に対し、刑事責任を認むべきでないと主張するが、(一)の主張については第三回公判調書中証人Aの供述記載によれば右証人が被告人に対し、弁護人主張の如き毎月坑口出炭一千瓲を確保するといつた約束を記載した確約書を交付したことはあるが、それは単に被告人から資金獲得のため必要だから書いてくれと頼まれて書いたものであつて、何ら拘束力なきものであることが認められるので、弁護人がこの主張につき引用する労働基準法第二条第二項の労働契約等の誠実遵守義務違反になるとは考えられないから、これを採用しない。(二)の主張については、受命裁判官の証人B、同Cに対する各尋問調書の記載によれば(イ)の如き復興金融金庫からの融資の口約があつたことは認められないし、また(ロ)の点につき、受命裁判官の証人Dに対する尋問調書の記載、第三回公判調書中証人Eの供述記載によれば、右Dより融資を受ける約束ができ、二百万円を借り受けてうち九十五万円を送金したこと、その後Dが融資しなくなつたのは、同人がF砿業所に投資しても利益がないと考えた結果であつて弁護人が主張するような労働争議のため融資の約束が破棄されたものでないこと、(二)の(ハ)の点につき、被告人の検察官に対する第一回供述調書の記載によれば、弁護人の主張するような事実がそれぞれ認められるが、右のように融資を受けて送金したとするも、F砿業所経営も統括主宰し、かつ同砿業所の使用労働者に対する賃金支払の責任者なる被告人が累積した不払賃金の支払のために此の程度の努力を払うのが当然の行為であつて、これあるを以て本件賃金不払防止に必要な措置をしたことは認められないから(二)の主張を採用しない、(三)の主張については前記(二)の(イ)について判断したとおり復興金融金庫からの融資の口約あつたことは認められないし、前記Cの供述記載によれば所謂経済九原則による融資停止は昭和二十四年四月一日からであつて、右停止以前すでに本件不払があつたことは判示事実に照し明かであるからこの主張も亦採用しない。