全 情 報

ID番号 10322
事件名
いわゆる事件名 大崎興産事件
争点
事案概要  賃金不払の罪についてその罪数が問題となった事例。
参照法条 労働基準法24条2項
労働基準法120条
体系項目 罰則(刑事) / 併合罪等
罰則(刑事) / 罪数
裁判年月日 1949年11月21日
裁判所名 福岡高
裁判形式 判決
事件番号
裁判結果
出典 高裁刑特報2号41頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔罰則-併合罪等〕
〔罰則-罪数〕
 使用者が労働基準法第二十四条の規定により労働者に対し、毎月一回以上一定の期日を定めて賃金を支払うべきであるのに同条の規定に違反して、その賃金の支払を怠り、同賃金不払の所為につき同法第百二十条第一号所定の罪に問われる場合の罪は、支払期日に賃金の支払を受くべき労働者の数に応じ、各労働者毎に独立して箇別的に成立するものと解するを相当とし、従つて各労働者の数だけの併合罪として処断すべきこと、検事所論のとおりである。そして原判決は適法な証拠によつて
 「被告人は大分県直入郡柏原村所在の製材業を営むA株式会社の取締役であつてB外二十六名の労働者を使用しているものであるが、法定の除外事由なく使用者をして右労働者に対して支払うべき賃金のうち
 第一 昭和二十四年三月分B外二十一名に九万四千二百二円四十四銭
 第二 同年四月分B外二十名に八万一千五百五十二円
 第三 同年五月分B外十八名に九万一千九百六十三円
 各賃金支払期日である右各月の翌月十日までに支払わなかつたものである。」
 という事実を認定し、右に対し労働基準法第二十四条第二項 第百二十条第一号 刑法第四十五条 刑法第四十八条第二項を適用し、被告人を罰金一万五千円に処している。
 検事の論旨は、原判決は、右併合罪の箇数を判示第一、第二、第三の三闘として処断したものであつて、判示第一を二十二、判示第二を二十一、判示第三を十九、都合六十二箇の罪数として処断したものではない。ということを前提としているようであるが、原判決の法令の適用は前述のとおりであつて、必ずしも三箇の併合罪として処断したものであるとは論断しがたく、六十二箇の併合罪として処断したものであると解されないことはない。併合罪の関係にある犯罪事実を判示するに当り各犯罪別に各項目を掲げて表示することは通常慣例とされているところではあるが、それは法律上必須の要件ではなく、その犯罪の箇数が判然と判別し得られる程度に表示してありさえすれば必ずしも各犯罪別に各項目を掲げて表示するの必要はなく、便宜概括的に表示しても差支えはない。右便宜表示に従い六十二箇の罪数の併合罪を三項目に分けて判示したものと解し得られるので判示の方法としても間然するところはないというべきである。