全 情 報

ID番号 10507
事件名 労働基準法違反被告事件
いわゆる事件名 日本チューブ工業事件
争点
事案概要  有毒ガスを発散する金属洗滌作業所において一八歳未満の者を働かせたとして起訴された事例。
参照法条 労働基準法63条2項
刑法38条3項
体系項目 年少者(刑事) / 未成年者の危険有害業務
裁判年月日 1970年4月21日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和44年 (う) 2406 
裁判結果 棄却(上告)
出典 高裁刑集23巻2号328頁/東高刑時報21巻4号153頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔年少者-未成年者の危険有害業務〕
 労働基準法が、成年労働者の作業所に許容し、ひとり年少労働者の作業所に禁じている「有害ガス」の意味は、一度で取り返えしのつかないような結果を招来する高度の危険性を有するものでないことは明らかである。新鮮な空気を吸えば比較的容易に回復はするが、換気を不十分にして長時間吸引してはならない。短時間で回復し、それだけなら目に見えた障害は起らないが、それでもそれを長期的、多数回にわたつて繰り返えすと健康状態に支障を来すおそれがある。作業所の換気につとめて留意し、長時間ガスを吸引しないようにという注意が、本件「クレハパークロ」についても無視してはならないものとされ、被告人両名は、自らの経験もあつて以上の有害性は十分に心得ていたことは記録上明認し得るところである。被告人両名が検察官に供述しているところは右の有害性についての認識をありのままに表明したもので、被告人らの本件違反罪の犯意を認定するに十分である。
 被告人らは右のような有害ガスを発散する本件金属洗滌作業所において十八歳未満の年少者を稼働させてはならないという労働基準法ないし女子年少者労働基準規則の禁止規定の存在を知らなかつたことは記録上肯認し得るが、これは刑法第三八条第三項による法律の不知に当り犯意を阻却しない。