全 情 報

ID番号 10580
事件名 労働基準法違反被告事件
いわゆる事件名 三新化学工業事件
争点
事案概要  本件硫黄の粉末をダクトの掃除口を開いて取り除くこと、また、盲フランジをダクトから取り外すことにつき、昭和四七年改正前の労働安全衛生規則一三七条の七にいう「清掃」及び「分解」に当たるとし、その際の危険防止義務を尽くさなかったことに対し、罰金五〇〇〇円、懲役四月を科した原審が維持された事例。
参照法条 労働基準法42条
労働基準法45条
労働基準法119条1号
労働安全衛生規則137条の2
体系項目 労働安全衛生法 / 危険健康障害防止 / 危険防止
裁判年月日 1973年2月1日
裁判所名 広島高
裁判形式 判決
事件番号 昭和46年 (う) 295 
裁判結果 棄却(上告)
出典 高裁刑集26巻1号42頁/時報707号111頁
審級関係 一審/山口地岩国支/昭46.11.19/昭和44年(わ)140号
評釈論文
判決理由 〔労働安全衛生法-危険健康障害防止-危険防止〕
 原判示の作業すなわち、右に認定したダクトの内部に付着した硫黄の粉末を取り除く作業が、果たして規則一三七条の七所定の化学設備の清掃作業に該るか否かの点から検討するに、右に認定した作業の目的、内容、とくにそれが前記のように作業の手順を誤ることによつて、毒性の強い硫化水素ガスの漏洩を生ずる危険のある作業であることと、一方、同条の規定の趣旨、とくにそれが前記のとおり危険物の漏洩による労働災害の防止を立法の眼目としていることに徴すると、右の作業は同条にいう「化学設備の清掃」を行なう場合に該るものといわなければならない。〔中略〕
 右化学設備の一部をなすダクトの掃除口に取り付けられた盲フランジを取り外す作業が、同条の定める化学設備の分解作業に該るか否かの点について検討するに、前記認定事実に徴して明らかなように右盲フランジを掃除口から取り外してこれを開放することは、ただちに右化学設備の一部をなすダクトの機能を失なわしめ、ひいては残留する硫化水素ガスの漏洩や、燃焼炉内の硫化水素ガスの爆発の危険を生ずるため、右化学設備全体の操業に密接な関係を有するものであるから、このような盲フランジが化学設備全体のうちに果たす機能に着眼すると、それは単にダクトのみならず、右化学設備に不可欠の本質的な構成部分であつて、化学設備の単なる付属的な部品であるということはできないばかりでなく、また右盲フランジの構造、すなわち右化学設備の操業中は、つねに数本のボルト、ナツトによつてダクトの掃除口に緊締され、いわばダクトと一体的、不可分的な構造をなしていることにかんがみると、右盲フランジのボルト、ナツトを外してダクトとの緊締状態を解き、ダクトから分離してこれと別個の独立した一個の部品としての状態におくことは、同条にいわゆる「分解」に該るものといわなければならない。