全 情 報

ID番号 10584
事件名 業務上過失致死、労働基準法違反被告事件
いわゆる事件名 九州電力山鹿営業所事件
争点
事案概要  クレーン車による転落車両の引上げ作業中、クレーン先端が高圧電線に接触し、作業員二名が感電死した事故について、高圧電線を家庭用配電線と軽信してクレーン車を運転していたクレーン業者に対し業務上過失致死罪の成立を認め、禁錮一年(執行猶予三年)が科された事例。; 昭和四七年改正前の労働安全衛生規則一二七条の八第四号にいう「看視人」につき、専ら監視行為のみに従事する者をいい、同時に監視行為以外の作業をも兼ねる者、つまり他の作業をしながら監視をする者は該当しないとされた事例。
参照法条 労働基準法42条
労働基準法45条
労働安全衛生規則127条の8
労働安全衛生規則349条
刑法211条前段
体系項目 労働安全衛生法 / 危険健康障害防止 / 危険防止
労働安全衛生法 / 罰則 / 刑法の業務上過失致死傷罪
裁判年月日 1974年11月28日
裁判所名 福岡高
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (う) 90 
裁判結果 有罪(禁錮1年,執行猶予3年)
出典 刑裁月報6巻11号1146頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働安全衛生法-罰則-刑法の業務上過失致死傷罪〕
 以上によれば、被告人が本件転落車両の引き上げ作業をなすに際し、前記電線が高圧電線であることの確認を怠り、前示の如き感電回避の措置を講ずることなく漫然と作業を進めた過失により本件感電死亡事故を発生せしめたものであることが認められる。そうしてみれば、被告人の過失責任を否定した原判決は、前示一時充電停止の措置に関する注意義務の前提事実を誤認し、また前示看視人を置いて安全作業すべき注意義務を怠つたことについても事実を誤認し、刑法二一一条前段の解釈適用を誤つたものというほかなく到底破棄を免れない。論旨は理由がある。〔労働安全衛生法-危険健康障害防止-危険防止〕
 労働基準法(昭和四七年法律第五七号による改正前のもの)四二条、四五条に基づく労働安全衛生規則(昭和四七年九月三〇日労働省令第三二号による改正前のもの。)一二七条の八第四号の「看視人を置き作業を監視させる」ことの趣旨は、原判示の如く、作業上より生ずる危害の発生を最少限度にとどめ、その使用する労働者を作業上の危害から防護することにあるのみならず、労働者が作業をすることによつて生ずる注意力の減弱又は欠如による危害の発生を防止すべき趣旨をも包含するものと解するのが相当である。したがつて、右にいう「看視人」とは専ら監視行為のみに従事する者をいい、同時に監視行為以外の作業をも兼ねる者、つまり他の作業をしながら監視をする者はこれに該らないものというべきである。