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ID番号 90027
事件名 損害賠償請求上告事件
いわゆる事件名 JR東日本(本荘保線区)事件
争点 Y鉄道会社のY保線区長が組合マーク入りのベルトを着用して就労していた労働組合員Xに、就業規則の書き写し等を命じたことが、労働者の人格権を侵害し、業務命令権の裁量の範囲を逸脱するものか否か。
事案概要 (1) 昭和63年5月11日午後2時15分ころ、Xがバックルに組合マークの入っているベルトを身に付けながら作業に従事しているのを見つけたY保線区長はXに、就業規則に反するとして当該ベルトを取り外すよう命じたうえ、翌日、本荘保線区まで出頭するよう命じた。
 Y保線区長は翌12日朝出頭したXに、自分の面前に着席させ、教育訓練として午後4時30分まで、就業規則の全文を書き写させるとともに、感想文を作成させ、書き写した就業規則の読み上げを命じた。
 Y保線区長はXに、翌13日も同様の作業を命じたが、胃潰瘍の病歴があるXは、腹痛を訴えて病院で診察を受けたところ、医師からそのまま入院するよう宣告された。
 このためXは、Y保線区長の行為は、労働者の人格権を侵害し、教育訓練に関する業務命令権の裁量の範囲を逸脱しているとしてY社とY保線区長に損害賠償を求め提訴した。
(2) 秋田地裁は、本件ベルトの着用はY社の就業規則に違反しないとし、Y保線区長による教育訓練の方法は、Xの人格を著しく侵害し、業務命令の範囲を逸脱した違法なものであって、不法行為を構成するとして損害賠償を命じ、仙台高裁秋田支部もこれを維持した。
 最高裁は、Y社の上告を棄却した。
参照法条 労働契約法
体系項目 懲戒・懲戒解雇/懲戒事由/違法争議行為・組合活動
労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/従業員教育の権利
裁判年月日 1996年2月23日
裁判所名 最高二小
裁判形式 判決
事件番号 平成5年(オ)502号 
裁判結果 棄却、確定
出典 労働判例690号12頁
労働経済判例速報1603号10頁
審級関係 <控訴審>仙台高裁秋田支部/H4年12月25日/平成2年(ネ)142号
<第一審>秋田地裁/H2年12月14日/平成2年(ワ)94号
評釈論文 松田保彦・ジュリスト1107号154~156頁1997年3月1日
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇/懲戒事由/違法争議行為・組合活動〕
〔労働契約(民事) /労働契約上の権利義務/従業員教育の権利〕
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原判決を正解しないでこれを論難するものにすぎず、採用することができない。