全 情 報

ID番号 05931
事件名 懲戒処分無効確認等請求事件
いわゆる事件名 時事通信社事件
争点
事案概要  年次有給休暇の権利は、労基法三九条一項、二項の要件の充足により法律上当然に生じ、労働者がその有する年次有給休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して休暇の時季指定をしたときは、使用者が適法な時季変更権を行使しない限り、右の指定によって、年次有給休暇が成立して当該労働日における就労義務が消滅するとされた事例。
 労働者が長期かつ連続した年次有給休暇を取得しようとするときは、事前の調整が必要であり、労働者が右の調整を経ることなく時季指定をしたときは、時季変更権の行使について使用者にある程度の裁量的判断の余地を認めざるを得ないが、右裁量的判断は合理的でなければならないところ、新聞記者の一ヶ月の年休の時季指定について、後半部分についての時季変更権を行使したことは適法とされた事例。
参照法条 労働基準法39条1項
労働基準法39条2項
労働基準法39条4項
労働基準法89条1項9号
体系項目 年休(民事) / 年休権の法的性質
年休(民事) / 時季変更権
裁判年月日 1992年6月23日
裁判所名 最高三小
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (オ) 399 
裁判結果 破棄差戻
出典 民集46巻4号306頁/時報1426号35頁/タイムズ791号71頁/労経速報1464号3頁/裁判所時報1077号4頁/労働判例613号6頁/金融商事909号26頁
審級関係 控訴審/04065/東京高/昭63.12.19/昭和62年(ネ)2183号
評釈論文 下井隆史・月刊法学教室146号80〜85頁1992年11月/宮本光雄・平成4年度重要判例解説〔ジュリスト臨時増刊1024〕226〜228頁1993年6月/慶谷淑夫・法律のひろば45巻10号53〜59頁1992年10月/高橋利文・ジュリスト1009号77〜83頁1992年10月1日/高橋利文・法曹時報44巻10号234〜268頁1992年10月/高田健一・平成4年度主要民事判例解説〔判例タイムズ821〕318〜319頁1993年9月/山田桂三・労働判例百選<第6版>〔別冊ジュリスト134〕110〜111頁1
判決理由 〔年休−年休権の法的性質〕
〔年休−時季変更権〕
 年次有給休暇の権利は、労働基準法三九条一、二項の要件の充足により法律上当然に生じ、労働者がその有する年次有給休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して休暇の時季指定をしたときは、使用者が適法な時季変更権を行使しない限り、右の指定によって、年次有給休暇が成立して当該労働日における就労義務が消滅するものである(最高裁昭和四一年(オ)第八四八号同四八年三月二日第二小法廷判決・民集二七巻二号一九一頁、同昭和四一年(オ)第一四二〇号同四八年三月二日第二小法廷判決・民集二七巻二号二一〇頁参照)。そして、同条の趣旨は、使用者に対し、できる限り労働者が指定した時季に休暇を取得することができるように、状況に応じた配慮をすることを要請しているものと解すべきであって、そのような配慮をせずに時季変更権を行使することは、右の趣旨に反するものといわなければならない(最高裁昭和五九年(オ)第六一八号同六二年七月一〇日第二小法廷判決・民集四一巻五号一二二九頁、同昭和六〇年(オ)第九八九号同六二年九月二二日第三小法廷判決・裁判集民事一五一号六五七頁参照)。しかしながら、使用者が右のような配慮をしたとしても、代替勤務者を確保することが困難であるなどの客観的な事情があり、指定された時季に休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げるものと認められる場合には、使用者の時季変更権の行使が適法なものとして許容されるべきことは、同条三項ただし書の規定により明らかである。
 労働者が長期かつ連続の年次有給休暇を取得しようとする場合においては、それが長期のものであればあるほど、使用者において代替勤務者を確保することの困難さが増大するなど事業の正常な運営に支障を来す蓋然性が高くなり、使用者の業務計画、他の労働者の休暇予定等との事前の調整を図る必要が生ずるのが通常である。しかも、使用者にとっては、労働者が時季指定をした時点において、その長期休暇期間中の当該労働者の所属する事業場において予想される業務量の程度、代替勤務者確保の可能性の有無、同じ時季に休暇を指定する他の労働者の人数等の事業活動の正常な運営の確保にかかわる諸般の事情について、これを正確に予測することは困難であり、当該労働者の休暇の取得がもたらす事業運営への支障の有無、程度につき、蓋然性に基づく判断をせざるを得ないことを考えると、労働者が、右の調整を経ることなく、その有する年次有給休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をした場合には、これに対する使用者の時季変更権の行使については、右休暇が事業運営にどのような支障をもたらすか、右休暇の時期、期間につきどの程度の修正、変更を行うかに関し、使用者にある程度の裁量的判断の余地を認めざるを得ない。もとより、使用者の時期変更権の行使に関する右裁量的判断は、労働者の年次有給休暇の権利を保障している労働基準法三九条の趣旨に沿う、合理的なものでなければならないのであって、右裁量的判断が、同条の趣旨に反し、使用者が労働者に休暇を取得させるための状況に応じた配慮を欠くなど不合理であると認められるときは、同条三項ただし書所定の時季変更権行使の要件を欠くものとして、その行使を違法と判断すべきである。